チーズでもワインでも、味を判断するにはもはやほとんど科学的なパラメーターを用いるのが一般だ。生ハムでもコーヒーでもそれは同じだ。ではトマトはどうだろう。おいしいトマトの基準は?「トマトのD.O.C」なんてあるのだろうか。
2、3ヶ月前、数あるトマトの種類の中でもすばらしくおいしいと言われる“パキーノ”の産まれた所、シチリアはシークリ(Scicli)で、世界中から400人以上のトマトの専門家達が集まって会議が行われた。長期間で掘り下げた議論の結果、ジュゼッペ・ノッカ博士の提案する「アロマグランマ」という味のパラメーターを制定することで一致した。これでトマトの質や種類を判断する。
1.甘さ
2.旨味
3.粉っぽさ(水分の量が少ないほどよい)
4.パキパキさ(固さ)
5.酸味
6.フルーティさ
の6つの判断基準がある。
このパラメーターをもとに、会議では専門家達がどの料理にどのトマトが合うかも含めて理想のトマトのリストをまとめた。結果は、
- アンティパストに最適のトマトは、“Il Dune(イル・ドゥネ)”、“mini-SanMarzano(ミニサンマルツァーノ)”、“pachino(パキーノ)”。
- モッツァレッラチーズとバジリコ、トマトの料理“カプレーゼ”には、“Arawak Cuore di Bue(アラワック クオーレ ディ ブエ)”という、その名の通り、牛の心臓の形をしたトマト。1950年代にリグーリア地方で食べられるようになったトマトで、“Salvatore(サルバトーレ)”という名でも知られる。
- スパゲッティ用のソースには、“San Marzano(サンマルツァーノ)”、“Eugenia(エウジェニア)”、“Riccio(リッチョ)”。リッチョはボローニャで生産されるトマトだ。
- 魚用のトマトには、“Ikram(イクラム)”、デリケートな味のトマトだ。
- 肉を煮込む時のトマトには、“Oskar(オスカー)”。
- さらにはドルチェ用のトマトまでも選ばれた。“Piccadilly(ピカデリー)”、“Cherry(シェリー)”、“Tyty(ティティ)”。これらのトマトはジャムやゼラチン用のトマトに最適で、コースの最後にデザートとしてでてくる。
ちょっとややこしい名前でこんがらがってしまうかもしれないけれど、ここはひとつ忍耐を持って読んでほしい。なぜならトマトの種類はこの他に300種類もあるのだから。市場に出回っているトマトは、毎年種を組み合わせて新しい種類を作っている。それでも、ノッカ博士のレッスンを頭に入れるだけで混乱することもない。それに実際は、イタリア人が判別できるトマトは大きく分けて4種類しかないのです、とノッカ博士自信が説明する。サンマルツァーノ、クオーレ ディ ブエ、パキーノとチリエジーノ(一般的なミニトマトのこと)の4種類だけ。
ルールは変わらず、どんなトマトでもあなた方のお皿にのった時の約束といえば、卓上用のオリーブオイルの小瓶。どの種類のトマトにも、理想の味付けといえばオリーブオイルが一番。たとえトマトがオリーブの木から程遠い国で産まれた野菜だとしても、なぜかオリーブオイルとトマトのコンビは最高なのだ。
イタリア人は年間で650万トンのトマトを生産する。生産量は世界で6番目に多い。第1位は、言わずとしれた中国で、年間3億トンを生産する。しかしイタリア人は、市場はもはや量だけでは勝ち取ることはできないとわかっている。大切なのは量より質だ。質と種類を向上させるために量を減らし、消費者のいかなる“気まぐれ”にも対応できるように投資するのだ。
もっと知りたい人は、2006年8月6日から8日まで、チュニジアのホテルを予約しておくことをお勧めする。この美しい北アフリカの街で、世界最高のトマト専門家達が集まって、第7回トマト会議が開かれるのだ。
シルヴィオ・ピエルサンティ
訳、朝田今日子