ルーカ・ディ・ジェズはプーリアの街、アルタムーラの英雄である。彼のすばらしくおいしい切り売りピザは、某ハンバーガーショップを閉店に追い込んだ。アメリカの企業はアルタムーラ市の主要道路に大きなハンバーガーショップを開店させた。店は客でごった返し、大繁盛、街の若者たちの格好の待ち合わせ場所になった。 ルーカは腕利きのパン職人だったが、切り売りピザとサルシッチャ入りフォカッチャを商売にしたかった。店を開くために唯一見つかった場所は、運悪く某ハンバーガーショップの隣だった。まるで自殺行為だ。しかしルーカは腕利きのパン職人である以外に、やたら頑固な若者だった。その場所を借りることに決め、切り売りピザを売り始めた。何百人もの若者がルーカの店の前を目に留めることなく通り過ぎ、こづかいを持ってハンバーガーを買いに行く。
ある時、たぶんよほどお腹が空いていたのだろう、ハンバーガーの列に並ぶ気持ちが失せたのか、ルーカのピッツァを買った人がいた。 「うん、こりゃうまいぞ。ハンバーガーよりずっとうまい。そしてハンバーガーより安いじゃないか。一体自分は今まで何を食べていたんだ。」 あとは簡単だった。口コミでどんどん広がった。数週間後、ハンバーガーショップは空っぽになり、ルーカの店には行列ができるようになった。巨大なアメリカ企業の店は白旗をあげ、店を閉める以外なかった。ルーカは有名でお金持ちになった。しかし思い上がることもなく、常に最高においしい切り売りピザとサルシッチャ入りフォカッチャを作る毎日だ。
2006.4.8 著者:シルヴィオ・ピエルサンティ 訳:朝田今日子 |