今帰国している。帰るたびに、つくづく日本は便利だなあと思う。 道を歩いていても、区役所や郵便局に行っても、ほんと皆礼儀正しくてホッとする。日本の若者のこととかいろいろ言われているけれど、並んでいてもどんどん進むし、途中で「今日はおしまい」と言われることはないな。
和食の本を作っている時、編集者が「表紙のデザインができたの。なかなか上手くできたって皆喜んでいるわ」と見せてくれた。しかし表紙の箸は、ばってんになっていた。バッテン。まわりでは2、3人の編集者、カメラマンが「こりゃあいいね」と和気あいあい。ミラノからウンブリアの家に帰り、しばらく考えて、「やっぱりさあ、お箸はそろえて置いた方が本当だと思う」とおそるおそるシルヴィオに言ってみる。「えー!なんであの時その場で言わなかの!?」と驚かれる。「だって、あんまり皆が喜んでいるからなんとなく言えなかった・・・」。編集者に連絡しなきゃとシルヴィオがあわてる。
日本食のことをほとんど知らないイタリアの人々と一緒に本を作るのは難しかった。でも逆に自分では当たり前だと思っていたことが伝わってなくて、こりゃいかんと必死になった。ご飯もののところに寿司関係のレシピが入っていなかったり、てんぷらと天丼の違いは何かと言われて、そんなこと考えたこともなかったので、説明できなくて困ったり。「天丼がご飯の上にのっていて、てんぷらはそうじゃないの。」と言うと、「じゃあてんぷらはご飯と一緒に食べないのか」と聞かれ、いやご飯と一緒に食べる時もあるし、ムニャムニャ・・・・とこたえてますますこんがらがったりもした。 担当の編集者はものすごく優秀な人で、そんな私のあやふやだったところをカバーして、ものすごい集中力で本をつくりあげた。レシピの中の色なんかも、最初文字や線など薄いオレンジ色一色だったのを、「ここのところをちょっと濃いオレンジに変えてみましょう」と提案する。ほんの小さな一部分のことなのに、それだけで全体がビシッとしまった。なんてセンスが良いのかしら。まいった。それも「きれいでしょう!どう?」っていう押し付けがましさがまったくなく、さりげなくきれい。さすがイタリア人。彼女の紫色のストッキングも「ギョッ、紫!」という風に見えず、そういえば紫できれい、という実に上品な着こなし。
料理はもちろん、和食器や、和風のものをレシピに使ったけれど、できあがった本は間違いなく西洋風だった。写真のとり方や本のつくりで、こんなに変わるものなんだなあといろいろ勉強になって面白かった。
今日子
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