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ウンブリア便り

南イタリア旅行1

南イタリアで出会った人々1

アルタムーラの夜

 7月の終わり、南イタリアへ旅に出た。朝起きてからなんの計画も立てず、着替えと洗面用具、地図を持ち、南に向けて出発。車だから、何時にどの列車に乗って何時について、と考えなくてよいので楽だ。私もシルヴィオも計画を立てられないたちなので、大体いつもあっちの方に行こう!と無計画で出発する。
「もし計画を立てても、途中で気に入った場所があったらどうするんだい」というのがシルヴィオの意見だ。

 アドリア海側からバリまで高速を走り、そこからアルタムーラという街に着く。ここ数日イタリアは猛烈な暑さで、高原のすずしい気候に慣れている身にこの暑さはキツイ。

 シルヴィオが車の中から、背の低い、日に焼けたおばあさんにホテルの場所を訊ねると、無言で眼鏡の奥からじ〜っと私達を見つめ、そしてくるりと後ろを向いて行ってしまった。変なよそ者が来たと思ったのだろうか。あっけにとられてシルヴィオと顔を見合わせた。よし、気を取り直して次! やはり色の黒い、ヒゲを生やしたおじさんに、「〇〇ホテルはどこですか」と訊ねる。すると「何しに行くんだい?」と逆に質問された。「だからホテルなんだけど」とシルヴィオが言うと、「だから何をしに行くか言ってくれないと答えられないじゃない!」と怒られた。面白すぎる。そしてようやく私達が旅をしていて、泊まるところを探していることがわかると、急に親切に教えてくれた。
想像していた以上に北部、中部イタリアの人々と様子が異なっていて、実に興味深い。

 この街にはハヤブサがたくさんいる。鳩や雀と一緒に飛んでいるのが見える。夜外にでると、いきなりハヤブサの糞が頭に落ちて来た。慌ててホテルに戻ってシャワーを浴び、もう一度気を取り直して外に出る。
地元の料理が食べられるレストランを探して、教えてもらった通りを何度も行ったり来たりするが見つからない。開店はだいたい夜8時半から9時くらいだと聞いている。うろうろしているうちに9時5分前になり、道端でイスに座っている連中に聞いてみると、「ここだよ」と言われた。さっきから5、6回前を通っていたが、真っ暗で電気がついてないので、レストランとは思いもよらなかった。店の人は「あと5分したら開けるから待っていて」と言ってどっしり座っている。
ようやく開いて入ると、店の主人はテーブルに腰掛けて食事をし始めた。接客は若い娘と息子、それに中学生くらいの子供。アルタムーラはパンが有名なところだ。さっそくでてきたパンとチーズを食べると、キメの細かいほんのり黄色っぽいパンがほんとにおいしい。小麦の味が、ウンブリアで普段食べているパンとまったく異なる。小麦粉と水、塩、イーストだけでここまで違うものができるのだから、パンにはいつも驚かされる。まわりを見回すと、ウエイター(息子)が知り合いのお客さんの横に座ってしばらくしゃべりこみ、遠くからヒゲを生やした男が時々私達の方を見ている。この男は会計の時もじっと見ていて、目が合ったのでシルヴィオと一緒にさようなら、とニッコリしてみたが、グッとつまって、でも目だけは相変わらずジロジロとこちらを見ている。世間様向けの笑顔とかもちあわせていないところがまた、土地柄を表していて面白い。南イタリアに親戚がいる知人が、無口でよそ者を信用しない、でも会いに行くたびに姑さんが毎日異なる手打ちパスタでもてなしてくれると、話していたのを思い出した。

 夜も暑くてなかなか寝付けなかったが(ホテルのクーラーは音ばかり大きくて全然きかなかった)、明け方ハヤブサの声で目が覚めた。東京でカラスの鳴き声で目覚めるのとはえらく違う感じだった。

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